採集と飼育

採集と飼育

捕まえてきたマミズクラゲをどうしたら良いか、というお問い合わせを何度かいただきましたので、ちょっとまとめてみました。

お願い!採集したクラゲを、採集地以外の場所に放流しないこと!これはいかなる生き物でも守るべきルールですが、マミズクラゲの場合は特に、生態が解明されていない外来生物であることから、どのような結果になるか予想ができません。飼育に使った水などの処分についても慎重に行うべきです。どうか、ご理解を。

採集方法

とにかく、網で掬わないこと。クラゲは壊れやすく、水から上げたとたんに自分の体重を支えきれずに崩壊してしまいます。また、荒目の網では触手が千切れたりします。ヒシャクやコップなどで、水ごとすくって移す、これがポイント。とにかく、扱いは丁寧に、丁寧に。


輸送について

蓋ができる空き瓶か、ビニール袋で。ペットボトルなども応用可能。注意するのは、空気を出来るだけ入れないようにすること。持って帰ってもそんなに大量に飼育できる訳ではないので、状態のよい個体を数匹だけもちかえるようにします。この方法ならば、短時間の輸送ならば損失はほとんどありません。郵送するときも同じように空き瓶を使い、念の為蓋の周囲をビニールテープなどで目張りします。真夏の暑い時期以外なら、数日の輸送に耐えるようです。


連れて帰ってきたら

飼育容器ですが、あまり大きい水槽はかえって不便です。ろ過装置等やエアポンプは使わないこと。気泡や水流がクラゲにダメージを与えることがある為です。1~2リットルくらいの透明な容器を使います。同じ容器を二つ準備すると世話が楽になります。輸送に使った空き瓶がある程度の大きさのものならそのまま飼育する方が簡単な場合があります。


水の用意

水道水の塩素にとにかく弱い、ということに気をつけてください。また、温度や水質の急変も禁物です。連れてきた初日は、できれば採集地の池の水で水換えするというのが無難でしょう。水道水を使う場合は市販の中和剤でなく、2日以上エアレーションした水道水が安全です。初日だけミネラルウォーターを使う手もあります。


最初の換水

採集地が近所で毎日水汲みに(雨の日も!)行ける場合はともかく、通常は水道水にクラゲを慣らしていかなければなりません。これは、数時間かけて水を徐々に入れ替える、という方法をとります。同じ温度の水で、1割くらいずつ、何度にも分けて水を入れ替えていきます。


餌の準備

コンスタントに与える餌としては、ブラインシュリンプを使用します。これは熱帯魚店などで売られている卵を塩水で孵化させて使用しますが、孵化には24~48時間程度かかります。

初日の給餌

とりあえず、初日はブラインシュリンプは間に合わないので、何か代替物を餌として与えた方が良いでしょう。池や田んぼでミジンコやツボワムシが採集できる場合はこれらを生きたまま与えます。動物性プランクトンならばなんとか食べてくれるはずです。熱帯魚用の冷凍アカムシや冷凍ミジンコを解凍して与えるのも良いでしょう。いずれも水槽内に適当な量を放り込んでやれば、触手で捕まえて口に運ぶ興味深い生態を観察することが出来るでしょう。熱帯魚用のフレーク状の飼料も食べるようですが、これは触手で捕らえることが出来ないようなので、口の部分に直接つけてやる必要があります。


ブラインシュリンプの与え方

ブラインシュリンプは出来るだけ孵化したてのものを与えるようにします。卵の殻や未フ化卵を取り除いたものを淡水でよく洗い、さらに淡水に10分ほどつけて塩抜きします。ろ紙や布などで濾して与えます。水槽に入れるだけでは食べのこしが多くなるので、ピペットを使って触手にくっつくように与えるか、大型の個体ならば口に浅くピペットの先を入れ、口柄の内側にブラインシュリンプをくっつけるようにします。


給餌後の換水(重要!)

餌を与えて数時間以内に、換水を行います。といっても、クラゲを傷つけずに水をかえるのは難しいので別の容器に新しい水をいれ、水温を合わせたものにクラゲだけを移してやります。やはり網などは使えないので、スプーンやチリレンゲなどで水ごと移します。容器は換水のたびに、キレイに洗浄して(洗剤などは使わないこと!)次の換水に備えます。これを怠ると、死んだ餌によって急速に水質が悪化します。


その他注意点

  • クラゲの胃などに気泡が入ると、沈むことが出来なくなり、空気に触れた部分から組織が溶ける。輸送時など特に注意。
  • 容器を清潔に保つのは、底に沈んでいるときに触れている部分の細菌感染を防ぐ為。無論食べ残しの餌などが沈んでいるのもよろしくない。
  • 容器を洗浄するときに洗剤を使わないこと。
  • 砂利や水草などは不要。水槽中に突起物がないようにすること。
  • マミズクラゲ飼育の為に、高価なクラゲ飼育水槽のセットなど購入しないこと。犬小屋で小鳥を飼うようなもんです。

繁殖させるには?

残念ながら。
採集したクラゲは多分一代限りでしょう。国内で発生しているクラゲはほとんどが無性生殖により増殖しており、オスだけ、メスだけというパターンが多いのです。しかし落胆は無用、クラゲがいた場所の水系にはかならずポリプが見つかるはずです。これは季節を問わず採集可能、是非チャレンジを。