冷蔵庫で飼う37メートルのクラゲ(キタユウレイクラゲ)

水槽内の野生個体はこんな感じ。
キタユウレイクラゲのポリプ
キタユウレイクラゲのポリプ、これで1個体。

37メートル!

北の海に触手を伸ばすと30メートルを超える巨大なクラゲがいるのをご存知でしょうか?メデューサの本体(傘径)だけで2メートルにもなるという巨大さがウリの キタユウレイクラゲCyanea capillata です。

クラゲではもちろん、単体の動物としてはシロナガスクジラ(こちらは 最大長33.6メートル)よりも長い「最大リーチ」を持ついきもの、ということになるでしょうか。

最大サイズの記録はマサチューセッツ湾で1870年に観察された傘径2.3メートル、触手長37メートルの個体です。ボストン港があるこのあたりは北緯42度20分ぐらい、札幌よりは南、函館よりも北ぐらいの、けっこう寒いところです。受験生の皆様には、「ボストン茶会事件(1773)の97年後」とでも記憶しておいていただけましたら幸いです。

ポリプも大きめ・・・

大きめといっても、おなじみミズクラゲのポリプなどより少し大きめになるぐらいで、5ミリを超えることはありませんからご安心ください。

形もミズクラゲそっくりで見分けがつかないほどですが、よく見ると触手数が倍、32本前後あるのがわかります。

増殖はチギレイソギンチャクでも見られる「歩いた跡に小さなポリプが現れる」ポッドシスト型がメインのようですがミズクラゲなどに比べると「のんびり増殖」するタイプです。

別名「ライオンのたてがみ」

英名Lion’s mane (ライオンノタテガミ)はコナン・ドイルの作品、シャーロック・ホームズシリーズの短編のタイトル、「ライオンのたてがみの冒険(The Adventure of lion’s mane,1926年)としても有名になった、アレです。和名としてはキタユウレイクラゲのほうが一般的です。

傘の形が円形ではなくて大きく切れ込みが8つ、小さめの切れ込みがその間に1つずつ・・・というより、クラゲ好きにとっては「エフィラがそのまま巨大化して分厚くなって触手もついたイメージ」といったほうが伝わりやすいかもしれません。

アカクラゲやミズクラゲと同じ旗口(はたくち)クラゲの仲間ですが口腕はかなり複雑な構造になります。

ちょっとややこしい学名

学名のCyanea capilata の属名シアネア、は青色(シアン)を、capilataは髪の毛を意味します。髪の毛はわかるけどぜんぜん青くなんかないのですが。これはもともと、Medusa capillata  (髪の毛のクラゲ)としてリンネ Linaeusによって1758年に命名されたあと、1810年にPéron & LesueurによってCyanea lamarckiiという別の種(こちらは青い、種小名はあのラマルクに由来)が記載された後、同属であると判別して今の名前になっています。その間にも別種C.versicolor(カワラタケのクラゲ 、アガシAgasizによる命名)とか、C.arctica( 北極圏のクラゲ、Péron & Lesueur )などの名前が付けられていますが、最初の種小名のcapillataが今のところ有効な名前となっています。

刺すクラゲ

キタユウレイクラゲは「刺すクラゲ」でもあります。

刺胞動物門のクラゲであれば全員刺胞毒を持っているわけですが、いわゆる「刺されない」クラゲ、たとえばミズクラゲなどの、主にプランクトンだけを食べているクラゲでは毒はあるけれど刺胞の「トゲ」の部分が短くてヒトの皮膚を貫通する能力がないため比較的安全とみなされていますが、キタユウレイクラゲの場合はプランクトンに加えて小魚なども餌の対象になるためこの貫通力があります。

飼育時には皮膚の弱いところ(手首とか、上腕部も)や粘膜(唇や眼の周辺とか、まあ、いろいろ)な部分に触手や傘や、刺胞が漂っているかもしれない飼育海水が触れないように気をつけて飼育をしてください。

寒いのが好き、暑いの苦手

北極海に住むクラゲとして有名ですが、北緯42度以上の北のほう、国内では北のほう、三陸以北の本州と北海道沿岸で冬季に観察できる、とにかく寒いところが大好きなクラゲです。

国内ではもうすこし暖かい地方では近縁種のユウレイクラゲCyanea nozakiiが生息しています。こちらは褐色部分がなく全体が乳白色の半透明でより「ユウレイ」らしい色づかい。

飼育下ではポリプ、メデューサともに上限19℃ぐらいまでが健康を保てる温度で、22℃を超える時間が長いと明らかに元気がなくなり、ひどい時には溶けてしまいます。逆に冷たいほうには丈夫なので10℃ぐらいの水温が理想飼育温度です。

冷蔵庫で飼う

普通ならば高温に弱い生き物を飼うのは ちょっとした覚悟が必要ですが、逆に寒さにすごく強い、と考えてください。

夏場は冷蔵庫で飼えばいいんです。低温なら溶存酸素量も多くて食べ残しのブラインシュリンプが腐敗するのも遅くて、ポリプ自体の代謝速度もほどほどなので維持するだけなら週に一度、飢えない程度のブラインシュリンプを飼育容器に投入して、2に月一度くらいにごみ掃除を兼ねて海水を一部交換ぐらいのペースでなんとかなります。おっと、交換用の海水も冷やしておくのをお忘れなく。野菜室ぐらいの温度が理想です。もしワインセラーがあればほぼ理想的な温度。20度以下ならおおむね安心です。

それすら面倒くさい、ということであれば3ヶ月ぐらいなら「まったく餌を与えない」という選択肢もあります。ポリプかなりやせて、というか白くなって小さくなってしまいますが、それでもポリプは生きていて餌を与えればすぐに元気を取り戻します。

餌を与えないときも、定期的に観察だけする、は生き物を飼う基本です。週に一度曜日を決めてとか、可能なら毎朝必ずとか。

夏では餌を与えたりしたときに冷蔵庫から出しっぱなしにして忘れるのがわずかな時間でも致命的になります。本来耐えられる温度でも急激な変化に絶えられず溶けてしまうことがあるのです。

メデューサへの挑戦

キタユウレイクラゲのエフィラ、ちょっと黄色いのが特徴的。

ストロビレーション条件はミズクラゲよりも低い9℃以下への温度変化がストロビラ化条件ですが、キタミズクラゲのような長期間ではなく数週間単位で変態が完了します。

メデューサの飼育方法は確立されていませんが、少なくともブラインシュリンプだけの給餌では成長が止まり傘径数センチほどにしかならないことがわかっています。

他種の生きたクラゲ、たとえばクシクラゲ類やミズクラゲ・キタミズクラゲを捕食させるとより大きなサイズに育つのですが、これがクラゲでないと駄目なのか、なにかキタユウレイクラゲにとっての「ビタミン」のようなものの不足なのか、クラゲをペットとして愛でる我々としては、生きたクラゲ以外の何かを探りたいところです。塩蔵した食材のクラゲとか、生サカナのミンチとか、魚卵・・・とにかく何か、魔法の物質を含む食材があるはず、と考えるだけでも、楽しいではありませんか。

純粋に所有する喜び

そんな水槽なんか用意できないよ、という方にも、ただポリプを飼い続けるだけでもお楽しみいただきたい。家に帰れば巨大クラゲがちいさなビンに閉じ込められて冷蔵庫の中で待っているというだけで、もう充分な贅沢です。

クラゲコレクターの方にはもちろん、コナン・ドイル・ファン、いわゆるシャーロキアンの方にも、コレクションのひとつとしてお手元においていただきたいのです。

冬季は通常便で、春から秋にかけてはすこし割高ですがチルド便でお届けします。

丈夫なポリプですが万が一の飼育事故(夏場の冷蔵庫の停電とか!)の 場合の再チャレンジは誠に勝手ながら冬季のみとさせていただきます。

L-003 キタユウレイクラゲのポリプ(2個体)¥2,500(送料別)
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