フラスチュール

ポリプは飼ってても、餌食う以外にあんまり動きが無いのですが、たまに変わった増え方するかと思うと、これがまた・・・


あんまり聞きなれない言葉だが、これマミズクラゲ特有?の生態。ポリプは最初、枝別れするように出芽によって個虫をふやしていくのだが、尻尾の部分でつながっている上移動をしないので、だんだん窮屈になってくる。すると、ポリプの代わりにフラスチュールと呼ばれる幼生を出芽しはじめる。


牛歩戦術?

ポリプから無性的に出芽したフラスチュールは、新天地を目指して匍匐運動を開始するのだが・・・・その速度が遅い!時速1ミリメートルという生き物が他にいるだろうか。しかもだいたい3日くらいで力尽きてその場でポリプになるのだが、とくに方向性を持たないようで、くるりと一周してもといた場所にもどってしまったりする。なんのために歩いたの?

Gen-Yu氏による連続写真。


構造

見た目は実に簡単なもので、0.5~1mmくらいでソーセージみたい。内部構造もこれまた簡単で、外肺葉と内胚葉それぞれ1層ずつの細胞の袋状である。いちおう前後があって、進行方向側がやや細くなっていて、こちらが出芽したときの先端であった部分、後端に向かってやや太くなる。繊毛はもたない。


どっちが頭?

肉眼では区別つきません。やや太くなってる進行方向後ろ側には刺胞があって、ポリプ化するときはこっちが口になる。移動中に口が出来上がって、餌のブラインシュリンプ幼生を食べることもある。


フラスチュールを観察するには

ポリプを飼ってれば、勝手にでてくるのだが、一応コツというものがある。ポリプに大量にアルテミアを給餌して24時間~48時間で、出芽が始まることが多い。水温が高いと、クラゲを出芽してしまう。20℃前後がちょうどいいかな?


ちょっとしか歩かないのは戦略か?

せっかく移動できるんだから、もっと早く動いたり、流されるなりして分布を広げればいいのに、と思うところだが、さにあらず、これはちゃんと訳があるんだな、きっと。

以下は私めの予想。でもけっこうあたってると思う。

実際のフラスチュール(クローン) フラスチュールがクローンでない場合を仮定
親ポリプの思惑 自分は幸運にも条件のいい場所に定着できたので、自分もコロニーも大きくなることが出来た。子供にも苦労をさせたくないので、栄養的に投資をしてやり、近くに住まわせてやろう。子供は少なくなるが、まあ大丈夫だろう。 子は自分の遺伝子を半分持っているのが、自分とまったく同じではない。あんまり近所に定着されるのは迷惑だ。できれば子供をばらまきたいがそうなると確率的に悪いので一匹の子にはあまり投資せず、大量にばら撒くのが効果的だ。
子フラスチュールの思惑 親の場所は同じ体質の自分にとっても理想的な場所だが、そのせいで自分と同じ遺伝子をもつ親ポリプが犠牲になるのは好ましくない。また兄弟にも同じく迷惑を掛けたくないので、親からは離れていて、かつ親と条件があまり違わない場所に定着したい。 親の体質の半分しか受け継いでいないので、今の場所が最高とは限らない。親や兄弟と同じ場所で競争するよりは新天地を求めたほうが得策だ。
予測 フラスチュールは親からあまり離れてない場所で、かつ親の捕食を妨げない場所に定着するだろう。その為には流されたりしないサイズと匍匐などによる移動が必要だ。 フラスチュールのサイズは再度ポリプ化できるぎりぎりまで小さくなるだろう。出来れば泳げればいい。多分プラヌラのサイズと性質を持つだろう。

ポリプの再生産サイクル、自然状態での寿命、ポリプの重量、個体密度による捕食効率の変化などが分かってくれば、ポリプの移動距離に関する美しい方程式が書けるんじゃないかと思う。