マミズクラゲの不思議

日ごろの不思議、よくわかってないことなど、またもや無責任にまとめております。

目次


マミズクラゲ以外の淡水くらげ

本HP上でカタカナでマミズクラゲ、と表記したのはすべてCraspedacusta sowerbyiのこと。淡水にすむクラゲ、はけっこういろいろいるようなのだ。
手元にある資料 (Dumont,1994)には、淡水(または汽水、海水ほどでないが塩気のある水)にすむクラゲの分布を示す世界地図がある。ここから拾ってみた。マミズクラゲ(C.sowerbyi)はほんとに世界中にいるので省略。

まず日本から。
Moerisia属の一種(ユメノクラゲAstrahydra japonicaか)
Craspedacusta iseana イセマミズクラゲ。幻の淡水クラゲ参照。
サハリン
Craspedacusta vovasi
中国
Craspedacusta sinensis
オーストラリア南部
Australomedusa baylii
インド周辺
Moerisia gangetica
Mansarilla Lacustris
Keralica Idukkensis
Limnocnida属5種?
カスピ海
Moerisia pallasi
アフリカ
Limnocnida属、tanganijcae等4~5種
ブラジル
Halmomises lacustris

クラゲ発生の刺激

海水産のミズクラゲが低温刺激でストロビラ化しクラゲを発生させるのは周知のこと、ではわれらがマミズクラゲはどうか?
おそらく高温が刺激になる。あとは餌の量、光など。水質も影響あるかもしれない。
碧南海浜水族館での飼育記録では、夏場は毎日100匹くらいのクラゲが出たとか。
しかし通常に常温飼育しててもクラゲを出すやつはいる。飼育下のポリプはまずクローンなので、個体差など無いはずだが。
自然条件ではコンクリート槽でよくクラゲが発生するが、pHも影響するのだろうか。

コンゴツメガエル水槽でのクラゲ発生周期

我家の水槽では、クラゲ発生を正確につかむことができなかったが、発生にある程度の周期がみられた。温度変化はほとんどないので、水替え(週に1~2回、3分の1程度を交換する)に影響されているらしい。クラゲ芽の出現とクラゲ発生には数日のタイムラグがあるので、詳細は不明のまま。

ポリプは移動するか?

しない、と思う。少なくとも飼育下の飽食したポリプはほとんど移動しない。

クラゲ化しないポリプ

飼育下のポリプで、クラゲが出なくなっちゃった系統があるらしい。
飼育下のヒドラでも、有性生殖しなくなっちゃう現象が見られるらしいので、さもありなん、ではある。
クラゲ化しやすい個体より、クラゲを出さない個体のほうがより幅を利かせることは容易に想像がつくので、気をつけてないと残ってるのはみんなクラゲ化しないポリプ、ひどいときは全部1個体からのクローン、てことになるのだろう。
だがこれは、遺伝的に多様性がある(つまり有性生殖で得られた)ポリプの場合。
はなっから全部がクローン(もちろんクラゲ化する)の場合はどうなのか。
自然状態でも、オスだけ、またはメスだけが移入された個体群の場合ではどうか。

クラゲは共食いしないのか?

してくれれば助かるのだが(クラゲを育てるための初期飼料にはほとほと困ってた)、飼育下で観察するかぎり、出芽したばかりのクラゲは共食いしない。サイズの問題ではないとおもう(自分より大きいブラインシュリンプは捕まえようとする)。自分の兄弟を認識してるのか?

追記:ミズクラゲ等海産のクラゲでは、血縁認識をしてるという報告があるんだって。同じ刺胞動物のサンゴでもずいぶん調べられてる。これは兄弟(正確にはクローン)を認識してる、と見るのが妥当だろう。ちゃんと実験してみる価値はある。でもどうやってわかるの?匂い?

フラスチュールの頭はどっち?

移動する方向は分かっている。ちょっと細いほうがそうだ。では、ポリプ化するとき、どっちがポリプの頭になるか?さあ、実験だ、シャーレにフラスチュールを入れてみて、観察してみたら・・・・
あれあれ、かなりの個体が両方がポリプの頭になってるぞ。というわけで、ただいま研究中です。乞うご期待。

その後、この問題について言及しているの論文を見つけた。進行方向の後側にポリプの口が出来る、が正解でした。(橋本 1987)

ポリプのデザインは機能的か?

ユメノクラゲのポリプには触手がある。ヒドラにもある。マミズクラゲのポリプにはごく短い触手しかなく、無いといってもいいくらいだ。なぜか。

仮説1:マミズクラゲがユメノクラゲより原始的で、触手をまだ「発明」していない。
仮説2:ねらう餌が違う。触手が無いほうが捕まえやすい餌がある。たとえば、ポリプの上をうっかり歩くような微生物をねらっている。
仮説3:マミズクラゲのほうが、餌の濃密な場所に住んでいるので、触手など作らなくても充分暮らしていける。

生物の形態に気まぐれはありえない。とすると、はたして、正解は?

追記:ユメノクラゲAstrogydraの触手は一般の刺胞動物の触手とは違う起源からなる擬触手で、いわゆる相似器官にあたるんだそうな。このことから、ユメノクラゲの方がマミズクラゲCraspedacustaのような無触手型のポリプ、おそらく擬触手に似た小突起を持つLimnocnida属から進化したと考えられるという説(橋本 1987)もあり、答はそう簡単ではないようだ。

ポリプのコロニーはどこまで大きくなる?

うちで観察しているポリプは、大きい方で3個体がつながったので、それ以上はない。ところが、聞くところによると、もっと多数の個体が集まったポリプになることもあり、どうも温度が関係しているらしい。低温で飼育すると、フラスチュールを出芽するのではなく、ポリプの分裂が起こるらしいのだ。

追記:これを書いたあとで、5個体に増えたコロニーを観察できた。まだ出芽するかもしれない。また、(Acker&Muscat, 1976)には9体以上のコロニーの写真もある。

やる気があるのかマミズクラゲ

ときどき発生するクラゲをビンに入れて、いろいろな餌をあたえているが、まず捕食しない。ビンの中を水面まで泳いでいき(この時は触手は縮んでいて、餌には目もくれない)、水面でゆっくり触手を開いて、沈んでいくときに触手が触れたら捕まえる気らしい。だが、触手は短く(約1ミリ)8本しかないので 餌が都合よく触手に触れるには、よっぽどの密度で餌が用意されていなければならず、しかも水量は沈んでいくための深さが必要なのだ。そのくせ食べる量はかなり大量らしい。不器用としかいいようがない。
同じ程度のサイズの海水のクラゲ(アンドンクラゲか?種類は不明)が海水魚の水槽に自然発生したことがあったが、こいつの要領のよさは頼もしいばかりであった。まず、触手が長い。2本しかないが、体長の10倍かそれ以上ある。コップのなかにクラゲとふ化して間も無いブラインシュリンプを2~3匹いれてみると、見ている間に捕まえて上手に触手をたぐりよせ、口へもっていって飲み込む。泳ぎ回る必要はなく、ただ触手をぶらさげていればいいのだ。マミズクラゲはこうはいかない。餌食べる気があるのか!

淡水クラゲのいる池は釣れない、のジンクス

ルアーフィッシング、とくにブラックバスをやる人々の間で信じられてるジンクスだそうな。ルアーフィッシングのホームページ「疑似餌の玉手箱」で見ました。疑うなかれ、ここでのFishing Reportではマミズクラゲの発見とその日の釣果までレポートされている。びっくり。
果たしていかなる相関関係があるのか。水温、水質などの条件か、クラゲが魚に及ぼす影響か。それよりも、ジンクスが出来るほど釣り人の間では淡水クラゲがポピュラーであるという事実。やっぱりさがせばもっといる生き物なのね。
掲示板で情報提供してくださった林さん、ありがとうございました。
参照:
疑似餌の玉手箱:ジンクス:http://www.inh.co.jp/~toshiya/meigen.html
疑似餌の玉手箱:Fishing Report平成10年9月 http://www.inh.co.jp/~toshiya/fishingreport18.html クラゲの画像にも注目!
疑似餌の玉手箱:Fishing Report平成10年8月 http://www.inh.co.jp/~toshiya/fishingreport17.html
疑似餌の玉手箱:Fishing Report平成9年10月http://www.inh.co.jp/~toshiya/fishingreport8.html