コモチカギノテクラゲ

コモチカギノテクラゲScolionema suvaense

これぞMyAQUA流のクラゲ。ポリプではなく、メデューサの紹介です。飼いやすい。殖える。美しい。


右の個体が、「子持ち」の状態、傘径約8ミリメートル、これでりっぱな成体です。遊離直前の2匹をかかえています。


まず、ご紹介

コモチカギノテクラゲSolionema suvaenseはヒドロ虫鋼淡水水母目ハナガサクラゲ科の、1cmに満たない小さなクラゲ。日本では初夏から夏にかけて、本州から九州の海岸で見られます。分類上淡水クラゲ目となっていますが、お間違いなきよう、海のクラゲです。
触手は40~60本で、先端近くが鍵状(というより、日本ネコの尻尾の先みたいに)曲がっていることがカギノテの名前の由来。この触手の先で、昼間は海藻(アマモ、ホンダワラ類)などにつかまっていて、夜間に泳ぎ出してプランクトンネットなどで採集できます。餌はプランクトンや魚の稚魚などで、小型のクラゲとしては刺胞毒も強力なようです。泳ぐ時はかなり活発な泳法を見せます。触手を縮めて、パッ、パッ、という感じ。ゆったりと拍動するおなじみミズクラゲや触手を伸ばしたまま泳ぐ他のヒドロ水母とは違った印象を受けるはずです。
それよりなにより、コモチの名のとおり、4本の放射管上に小さなクラゲが発達して無性生殖により殖える、というのが最大の特徴。
ポリプ期や有性生殖についてはまだ解明されていない、といわれていましたが、最近有性生殖について観察されたみたいです。詳細調査中。


カギノテクラゲとの類似

似た名前のカギノテクラゲGonionemus vertensもそっくりで分類上も近縁ですが、比較的大型(カギノテクラゲは2cmくらいになる)、触手が多い、平行器の数が80個以上(コモチカギノテは16個のみ)などで区別がつきます。それ以上にカギノテクラゲではクラゲを出芽する、ということは少なくとも知られてはいないので子供を産むようならまちがいなくコモチカギノテです。ちなみにカギノテクラゲも飼いやすいクラゲで、コップ止水飼育で長期間楽しめます。


小さいからどこでも飼える

この手の小さなクラゲなら、コップで飼う、というのが一番ラクで普通の方法。ちょっと大き目の、ブランデーグラスなんか洗いやすくて、数匹を楽しむにはちょうどよろしい。机の上におくのも楽しいけれど、この場合は万一こぼしたりすることを考えて密閉できる蓋がついたものが安全です。

ろ過装置やエアレーションは不要、というより、使用してはいけません。ろ過装置はクラゲが吸い込まれちゃう。ブクブクはほんの弱く、水面ちかくでポコポコやって弱い水流を作る、という手口もあるんだけど、あまりおすすめしません。どうしても水槽のまわりが海水の飛沫だらけになっちゃうし(蓋をしていても)、その海水にはクラゲの刺胞が含まれていることがあり、観察時などに飛沫が目に入るとちょっと厄介なことになります。
もちろん、普通に飼育してるぶんには、手に触れたくらいではなんともないので、ご安心を。


水温維持がポイント

冬場は水温の低下を防ぐため、鑑賞魚用のヒーターとサーモスタットの利用をお勧めします。昔はこういう小型の水槽を保温するのは一苦労で、大きな水槽のなかに飼育容器を浮かべたり(ウォーターバス方式)、卓上用の白熱電球で照らしたりといろいろ工夫してたのですが、最近は水温固定式の小型のヒーターが水棲カメ用として安価で売られていますし、爬虫類用のパネルヒーター等も入手しやすくなっています。
夏はもちろん、水温が上がりすぎないよう涼しい場所を確保してください。クラゲに限らず、ほとんどの海の生き物は夏場の高温に弱いのですが、コモチカギノテクラゲに関していえば他のミズクラゲなどに比べれば28℃くらいの高めの水温でも平気のようです。30℃を超える日が続くとちょっとつらい。


餌の与え方の、ちょっとしたコツ

餌は孵化させたブラインシュリンプを、1日に1回か、2回くらい。週に一度、一日ぐらいの絶食は問題ないのですが、長期間の絶食に耐えるポリプのようには行きませんから、常にローテーションを考えてブラインシュリンプを孵化させる必要があります。幸いにして冷凍したブラインシュリンプでも少しは食べてくれるので、万一餌を切らしたときのために冷凍庫に用意しておくべきです。最近発売された、冷凍飼料で、ビタミン強化されたブラインシュリンプベビーなどは、長期間単一飼料での飼育から来る微量栄養の欠如を防ぐためにも有効かもしれません。
給餌後1時間後くらいで、食べ残しや未消化物をピペットで取り除くか、換水を行います。

さてコツ、なんですが、通常生きたブラインシュリンプを与える時は孵化させるときの海水が非常に汚れている為、水槽に入れないようによく水洗いをするものなのですが、これをやってしまうと食べ残しが大量に出てしまいます。ブラインシュリンプは淡水に入れてもしばらくは生きていますが、海水にもどしても数時間で死んでしまうのです。海水で洗ったものならクラゲが捕食するまで生きていてくれますから、毎日食べきる分だけを与えていれば必要以上に飼育水を汚さないで済むので最良の方法だけど、結構面倒くさい。そこで、あえて洗浄せずに与えてしまいましょう。
私が採用している方法は、

・1リットルサイズの、小さなプラケースを用意する。これ最近は100円ショップでも売ってます。
・別の容器で孵化させたブラインシュリンプを、200ccくらいの海水と未孵化卵と卵殻ごとプラケースに入れる。
・明るい所にプラケースを置いて、10分ほど置くと、ブラインシュリンプが明るい方に集まるのを待つ。
・するとどういうわけか、容器のコーナー部分に、ぎっちり密集するのです。ここをピペットで吸い取って、クラゲに与える。

この方法なら、汚れた海水は0.5ccくらいが飼育水に入るだけです。卵殻や未孵化卵はほとんど入らない。私これ毎日出勤前にやってますが、馴れると苦にならないもんですよ。


換水と、容器のお掃除

水換えというよりは、クラゲを別の容器に引越しさせる、といった方がいいでしょう。
週に1~2度、水槽の掃除を兼ねて新しい海水の入った別の水槽にクラゲを移します。餌を与えた後の方がクラゲがよく見えるので扱いやすい。
クラゲを移動させるのは、ちいさいうちはピペットなどで充分ですがちょっと大きく(5ミリメートル以上)なったら、必ずスプーン等で海水ごと。ちょっと太めのストローやピペットのゴムの部分を取りはずしたもので、クラゲを吸い込むのも方法のひとつ。
このとき、よく古い海水の方に見落としたクラゲがいるから御用心。一日おいておいて翌日見るとみつかったりするんですよ。


増える

まったく言うことなし、といったところですが、殖えすぎるってのが唯一の難しさでしょうか。
成熟したクラゲは毎日のように、子クラゲを産みます。子クラゲがまた成長が早くて、一週間くらいで大人になります。
こればっかりはコントロールのしようがありません。ジュウシマツやらハムスターが殖えすぎる、というならオスメス別にしておけばいいだけですが、コモチカギノテクラゲでは1匹から殖えるから、どうしようもない。思い付く限りのお友達や親戚みんなに里親になってもらう、なんていうのはいかがでしょうか。
ちなみに持ちはこぶときは、500ミリリットルくらいのペットボトルに海水をいっぱいいれて密閉するのがいちばんてっとりばやくて安全です。温度が気になる時はペットボトル用の保温袋みたいなのがそのまま使えますしね。


クラゲを産むクラゲについて、ちょっと

シミコクラゲのページでもご紹介しましたが、この、クラゲがクラゲを産む、という形態の無性生殖をする種は、ざっと見渡しただけでも、

  • ハシゴクラゲ、スズフリクラゲ、シミコクラゲ、コツブクラゲ(花水母目)
  • コモチクラゲ、ヤクチクラゲ(軟水母目)
  • コモチカギノテクラゲ、ミサキコモチクラゲ(淡水水母目)

なんてところ。日本で見られるだけでも200種ほどのクラゲの中ではあくまでも少数派です。
しかも、これらの、無性生殖するクラゲ、という種は、共通点が比較的小型の(ヒドロ虫鋼はみんなそうだけど)クラゲというだけで類縁関係は薄いのです。つまり、それぞれの分類群で独立して複数回の進化が起ったことによって、コモチ型増殖法という能力を獲得したクラゲが出現した、と考えられます。

ヤクチクラゲを除いていずれも本来なら生殖腺が発達するところ(口柄上か、放射管上)に水母芽がついて、親と同じ小さな水母が分離してき
ます。ヤクチクラゲはというと、口柄が新たに生じた後に水母自体が分裂する、というちょっと変わった殖え方をします。余談ですが、クラゲはみんな分裂して殖えるものだと信じていた知人がいました。市販のミズクラゲ水槽を購入して飼っていたミズクラゲがプリッと分裂して殖えるのを心待ちにしてたとか。どうしてそんな勘違いをしたのか分かりませんが、話を聞くとどうも、
1.下等動物はみんな分裂して殖える
2.クラゲも下等動物である
3.ゆえに・・・という二重の誤解をしていたようです。
人間が動物の中でもっとも高等で、構造が単純な生物ほど下等である、という思想は根強いようですね。

確かに、動物で、有性生殖無しで殖えるというのは多くのプランクトン(ワムシ、ミジンコなど)や昆虫(アブラムシなど)などでよく見られるもので、
1.環境が一定期間安定している
2.餌は豊富にある
3.かといって、個体が大型化するわけにはいかない
といった諸事情が存在する時には有効な戦略です。
その上、環境がいつか悪くなることが分かってるから、その時は有性生殖によって、遺伝的にバリエーションを持つ子孫をのこす、というのが常套手段となっているようです。

こんな器用なこと、ヒトを含む大型の哺乳類には真似できません。それでもまだ彼ら(もしくは彼女ら)を下等動物と呼べるでしょうか?


販売は不定期

安定して供給できるとは限りません、販売していたら、この機会をお見逃しなく。

M-002コモチカギノテクラゲ(1~3個体) ¥2,500(送料別)
入荷待ち
M-012コモチカギノテクラゲ(1~3個体)+飼育セット ¥3,500(送料別)
入荷待ち

M-012のほうの飼育セットの中身は以下の通り。 セットの中身は以下の通り。到着してすぐ必要なものを少量ずつ用意しました。

  • 観察用シャーレ
  • ミニシャーレ
  • ブラインシュリンプの卵(クラゲの餌)
  • ブラインシュリンプ用スプーン
  • ピペット
  • ミニピペット
  • 飼育用海水(500ミリリットル、すぐ使えます)
  • 人工海水の素(換水用1リットル分)
  • 塩素中和剤(水道水のカルキ抜き)

ご注文はご注文のページをよくお読みの上、メールにてお願いいたします。

クラゲとポリプの販売サイトです。