誤解がないように改めて申し上げておきますが、ヒドラは「クラゲ」ではありません。いくら飼ってもクラゲは出ません。
でも私これ好きなんだもん、いいじゃないか!分類学上は非常に近い仲間だし、飼いやすいし・・・それに・・・
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目次
ポピュラーな動物?
ヒドラはこのへんの動物の中ではわりと知名度が高いほうだと思うのですがいかがでしょうか。図鑑なんかにはちゃんと絵か写真が載ってるし、淡水に住んでるってことでわざわざ別枠あつかいになってることも多いようです。教科書なんかにも再生とか出芽とか散在神経系のモデルとして登場するし、熱帯魚の本なんかには稚魚を食害する嫌われものとして取り上げられたりしています。でも実物見たこと無いひとも多いのではないでしょうか。だいたいどれくらいの大きさか、なんて知ってる?
実物はけっこう小さい
だいたい1センチくらい。色は灰色とか、褐色。写真でよくみる肌色やオレンジ色のものは、飼育下でブラインシュリンプを与えられたもので、餌の色がそのまま体にのこっているためで、自然でみると水垢の色そのものです。それから、緑色のものもあります。これは体内にクロレラなど葉緑素を持つ微生物が共生しているタイプで、グリーンヒドラっていいます。
体は細い棒状で、そこから長い触手が6~8本くらいでています。触手数は幅があって、刺胞動物としては珍しい奇数の個体が結構います。同じ遺伝子をもつクローンでも数は一定ではないので、あんまりこだわってないということでしょうか。
ヒドラの探し方
かくいう私も、水槽に自然に湧いた、というのは一回しか経験がない。じゃあ珍しい生き物かって言うとそんなことない、日本にも数種が知られてて探す気になればそんなに珍しいもんじゃありません。この辺は「やってみる」というのだけがポイント。いろんな場所でちょっとずつ挑戦してみること、いないと思ってもサンプルを持ち帰って時間を置いてみるのも大事。
たいていの本には落ち葉などを拾って観察する、とありますが、意外にねらい目なのが水草。クロモ、カナダモ、エビモなんかは持って帰ってもすぐには腐らないというのが便利なのです。そのまま飼うのにも都合がよろしい。
ただし、水から引き上げると縮んじゃってかたまりみたいになっちゃって、一見なにもいないように見えます。水の中に入れてしばらく待って体全体をのばすまで待ってから調べるのもポイント。
ヒドラの飼い方
これはもう、簡単。ポリプの飼い方をマスターしてれば、その応用編でOK。淡水だから更に簡単なんだけど、ブラインシュリンプをちゃんと塩抜き洗いをすることだけが重要。それから当然だけど、水道水の塩素抜きと、水質の維持。どっちかっていうと、うまくいってるとき油断するのだけが危ない。
- ・飼い方その1 タッパウェア
- これが一番手軽で増殖も早い。クラゲのポリプの多くと違って、容器にくっついてもピペットや細い筆で簡単にはがせるし、すぐまたどこかにくっつくので容器を二つ用意して餌を与える度にヒドラだけを新しい水に移すようにするとよい。水草をいれておくと大部分はそっちにくっついてるので手間が省けます。ガラス容器でも可。
- ・飼い方その2 ポリプ育成用水槽
- 水換えも面倒、という人はこちら。もうこれ以上ないくらいに簡単に飼える。
水草もちょっと入れると、グリーンにヒドラのオレンジ色が映えて鑑賞用としてもグッド。 - ・飼い方その3 密閉容器(研究中)
- 換水も給餌もしない、という究極の方法。たとえば、ペットボトルみたいに蓋がぴったりしまる容器に、
・餌になる微生物(ミジンコ、ミズミミズ、ワムシなど)
・コケ掃除の為の巻き貝
・植物(水草)
・砂または土(バクテリアの基材となる)
・水
・主役のヒドラ
を入れて、密閉。光と温度の調整をしてやるだけで自給自足、という目論見なんだけど。
ミジンコやワムシが大発生と消失をくりかえしちゃうのとアオミドロのような藻類が発生してどこかで崩壊しちゃう。同じことをプランターや60センチくらいの大きな水槽でやれば意外と簡単なのは分かってるんだけど、なんとか卓上でやりたくて、いろいろ挑戦中。
無理して難しく飼おうとしなければ、どうやっても簡単に飼える生き物なので弱点はひとつ、夏場の高温。
30℃を超えるといきなり調子をくずしちゃう。高温に弱いといわれてる生き物もたいてい、短時間なら持ち直すんだけど、私の住んでる名古屋周辺の夏は暑いし長い。ポリプもそうだけど、クーラーの効いた部屋に移して、出かけるときもタイマーで室温が30℃以上にならないように調整してます。水槽用のクーラーがあれば一番なんだけどね。
ヒドラに遊んでもらう
自由研究、なんていうとちょっと聞こえがいいだろうか。ほんとに夏休みの宿題にはもってこいの動物。短期間で結果が出やすいしね。
- ・とことん増殖させる
- 一匹から一ヶ月で何匹まで増やせるか。最初のうちは三日ごとに1匹増える、なんてペースだけど、途中からネズミ算式になるから計算上は膨大な数になるはず。これが無性生殖の威力、どこらへんで頭打ちになるかも調べるとおもしろい。
- ・移動を観察する
- イソギンチャクやポリプがゆっくりとだけど移動できるのはご存知でしょうか。ヒドラはもっとすごい、足盤を自分ではがして、触手を上手につかって枝渡りまでやってのけます。ちょっと目をはなすといつのまにか違う所に。どんなときに移動するか、たとえば光、餌、うすい塩水などを嫌うのか、調べるとおもしろそう。
- ・いろんな餌を食べさせる
- ブラインシュリンプ以外にもいろいろ食ってくれる。ミジンコ、ワムシ、ゾウリムシなんて小さいものからユスリカ、イトミミズなどどこまで大きいものを飲み込めるか。生き餌以外にもソーセージや魚の煮物とか。湯通しして油をぬいて、それでも水が汚れるからすぐに水換えすること。
- ・有性生殖の誘導
- 一般に水温の変化により生殖巣が出来てくる。この形状が面白くて、ここから名前をとったチクビヒドラなんて種がいる。乳首、ですぜ、あなた。どんなのか想像してから、Gen-yuさんのこちらのページをごらんください。自然に飼ってても出てくることはあるんだけど、ヒーターとサーモスタットを使って実験。卵は耐久卵になるらしい。
その他にもおなじみの再生実験や、裏返し実験なんてのもあるけど、あんまり残酷なのはちょっとね。
ヒドラの種類
日本産では数種。
・Hydra vulgaris(チクビヒドラ、かつてのH.magnipapillata)
・Hydra paludicola(ヌマヒドラ)
・Hydra japonica(ヤマトヒドラ)
の三種は互いに近縁の中型のヒドラ、国内に広く分布。
・Hydra parva(ヒメヒドラ)
は小型で雌雄同体、関東地方以北で採集されている、と。
・Pelmatohydra robusta(エヒドラ)
が大型のヒドラで、体の下部にややすきとおった細い柄部があって他の種類との区別が容易?おお、うちのはこれかな、と思ったら東北地方以北に分布だって。一般にヒドラの同定には有性生殖のときの形態が重要とのことで、いつでもわかるってもんじゃないらしい。ま、いいか。そのうち判明したらラッキー、ということで。それから、クロレラを共生させてるグリーンヒドラ、これは別の種(H.viridissima)なんだって。普通の種にもクロレラや藻類が寄生して緑色になることもあるけど、これは宿主にとってはダメージになるらしい。
分類学・・・クラゲとの類縁関係
さて問題です。次のうち、ヒドラともっとも近い仲間はどれでしょう?
- イソギンチャク
- サカサクラゲ
- ジュウモンジクラゲ
- マミズクラゲ
- オベリアクラゲ
- ギンカクラゲ
って、簡単すぎるかしら。いや、クラゲマニアはかえって悩むかもしれないぞ。
図鑑見てもいいですよ。不親切な図鑑には、「イソギンチャクとクラゲのなかま」なんて書いてあるだけだし。
1.イソギンチャク はさすがに、クイズ馴れした人は選択肢からはずすでしょう。形や生態は淡水のイソギンチャクというところですが、イソギンチャクとサンゴは同じ刺胞動物でも花虫綱。隔膜、口道があり、ヒドラより体制がやや複雑。
2、3、も残念ながら違う。サカサクラゲのポリプはちょっとヒドラに似てるし、ジュウモンジクラゲも一生底生生活だけど、両方とも鉢虫綱。
4、5、6で迷ってもらえると出題者としてはうれしい。ここで類縁はかなり近くなって、3種ともヒドロ虫綱、ヒドラはクラゲを出さないけど、ヒドロ虫鋼はクラゲ世代を持たないやつらの方が多いくらいなのです。あ、そうそう、ヒドロ虫綱Hydrozoaって、もちろんヒドラHydraのような動物Zoonって意味です。
このヒドロ虫綱の中の分類なんだけど、なんと二本立て。こんなやり方してる動物群ってあんまりない。
なんでこんな混乱が起ってるかというと、各分類群にクラゲ型がないやつ、ポリプ型がないやつがごっちゃになってて、統一した特徴による分類が出来ないこと、しかもその特徴がクラゲではそっくりでポリプでは全然ちがうとか、その逆があったりすること、いまだにポリプとクラゲが結びついていないとかポリプが見つからないクラゲがいたりすることなど、まあ一筋縄ではいかない相手なのです、ヒドロ虫というやつは。
門 | 綱 | 目 | 代表的な種 | |
浮遊生活型の分類 | 底性生活型の分類 | |||
刺胞動物門 Cnidaria |
ヒドロ虫綱 Hydrozoa |
花水母目Anthomedusae | 無鞘目Athecata | ヒドラ、ウミヒドラ、カミクラゲなど |
軟水母目Leptmedusae | 有鞘目Thecata | オベリアクラゲ、ギヤマンクラゲ、 オワンクラゲなど |
||
硬水母目Trachymedusae | (底性生活期なし) | カラカサクラゲなど | ||
管水母目Siphonophora | (底性生活期なし) | カツオノエボシ、ボウズニラ、 ヒトツクラゲなど |
||
盤水母目Chondrophora* | (底性生活期なし) | ギンカクラゲ、カツオノカンムリなど | ||
淡水水母目Limnomedusae | マミズクラゲ、コモチカギノテクラゲ、ハナガサクラゲなど | |||
(短命で退化的なクラゲのみ) | アナサンゴモドキ目 Milleporina |
アナサンゴモドキなど | ||
(浮遊生活期なし) | サンゴモドキ目 Stylasterina |
サンゴモドキ、ストロベリーサンゴなど | ||
箱虫綱 Cubomedusae |
目以下については略 | アンドンクラゲ、ヒクラゲ、ハブクラゲなど | ||
鉢水母綱 Scyphozoa |
ミズクラゲ、アカクラゲ、 サカサクラゲ、ジュウモンジクラゲ、 イラモなど |
|||
花虫綱Anthozoa | イソギンチャク、サンゴ、ヤギ、ウミトサカなど |
さてヒドラは無鞘目Athecataの中に入ります。
そう、選択枝のなかに同じ目のやつがいないのは、ちょっと表のほうにインチキをしたから。*印の盤水母目Chondrophoraのところ。彼らは浮遊生活をしてますが、図鑑によく出てるようなギンカクラゲの写真、あれはポリプの群体のなかの一個虫がフロート型に変化したものなのです。有性生殖するときは全然違う形の小さくて短命なクラゲを出芽します。このクラゲの特徴から、最近になって花水母目Anthomedusaeに編入されたのです。
花水母目は無鞘目のポリプの出すクラゲなので、(クラゲを出さない無鞘目の種ももちろんいる)これが一番ヒドラとは近縁。
というわけで正解は6番のギンカクラゲでした。
どうでもいいことだけど、この仲間の分類の話は面白いんだけど、いつも冷や汗。ややこしいし、文献によって毎回変わってるし、なんてったって、クラゲメーリングリストjfishでもさんざんお世話になってる京大の久保田信先生のご専門ですからね、系統分類学。今回も間違ってないことを祈るばかり。
ヒドラ飼育セット
というわけで、お約束の販売です。
我家で飼い慣らした、アルテミア色の美しい個体です。 ご注文はこちら から。
H-003 | ヒドラ (約3個体 )生体のみ | ¥1,500(送料別) |
H-023 | ヒドラ (約3個体 )+飼育セット | ¥2,500(送料別) |
E-003 | ヒドラ学校用 (10個体以上 要予約) | ¥2,000(送料別) |
H-023の飼育キットの内容は、
・ヒドラ(約3個体)
・ブラインシュリンプの卵(ヒドラの餌)
・ブラインシュリンプ用スプーン
・ピペット
・ミニピペット
・シャーレ
・ミニシャーレ
・塩素中和剤(水道水のカルキ抜き)
これだけあれば、多分他の買い物は不要。あとはご家庭にあるものを利用して、あなただけの飼育法を工夫してみてください。
目標は、たくさん増やすことじゃなくて、末永く培養しつづけること。飼いやすいから難しい、という見本のような生き物なのです。
ご注文はこちら ご注文のページをお読みの上、メールにてお願いします。
ヒドラその後・・・
ヒドラの販売を始めてほぼ1年くらいの間に多かったのは授業で子供たちに見せたくて、という学校の先生からのお問い合わせでした。
多くはポケットマネーでお買い求めいただいてるようで、2~3セットをお求めになられて増殖させてから生徒全員に配りたいが・・・というお問い合わせもございました。
これは思わぬ反響で、中には授業での生徒さんの反響をメールでお知らせくださる先生や、授業に間に合わないといけないからとわざわざ他県から拙宅まで商品を引取りに来られる先生もおられて、教育への熱意には頭の下がる思いがいたします。
そこで、ささやかながら当店も応援、ということで考えたのが学校用パックです。
ちょっとだけ、お買い得になってます。個体数に余裕があるときはキモチだけ増量してお送りします。
ご注文から発送までに、場合によって2週間以上の余裕をいただけますようお願いいたします。
ヒドラその後のその後(上級編)
いつも販売している「ヒドラ」は、熱帯魚の水槽でみつかったあまり有性生殖をせずに無性生殖だけで安定して増えるクローン個体です。
扱いやすく誰が飼っても(ズボラな店主でも!)安定して供給できるのがウリなのですが、それでは物足りない、という方に。
店主の定点観測地点で春から初夏にかけてだけ、毎年出会える野性のヒドラもご紹介します。
水温に対しての感受性が高いようで、少しの刺激で造卵器・造精器をつくり有性生殖を始めますが、その後衰えてしまうようで、毎年夏を越すまで維持しきれていません。
培養しているクローン個体ではないので、オス・メス両方が観察できて、維持がうまくいけば実験用としては最適なのですが・・・ 決して初心者向きではありませんが、ヒドラの有性生殖器や受精の様子を顕微鏡下で観察したい方、研究用にデドコロがわかっているヒドラが必要な方向けのおすそ分けです。
ご理解のうえご注文ください。
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