ツインテールの立方クラゲのポリプ

立方クラゲ第二弾。ツインテールのクラゲの正体は・・・


ポリプ

販売するのはポリプ。触手先端の輝きにご注目ください。

ツインテールボックスジェリーこと、遊離直後のCarybdea marsupialis

遊離直後のこの姿。飼ったひとにしか見られない。


新種か?触手が二本の立方クラゲ

ポリプを入手したときは、アンドンクラゲのポリプかなとも思っていました。でもクラゲが出てびっくり。 立方クラゲといえば、4本触手のアンドンクラゲを代表に、4箇所から3本ずつ葉状体が出るミツデリッポウクラゲとか、かならず触手数は4の倍数だと思ってたのですが、なんと二本触手。
触手をぎゅっと縮めると環状にあつまった刺胞群が濃色の縞々に見えるのが特徴的。
それと、この眼。立方クラゲのクラゲに特有のロパリウムrhopaliumていうんだけど、これがちゃんとレンズと網膜があって像を結ぶ「眼」で、こっちを見つめてて・・・か、かわいい。
これ、もしかしたら、新種?


新種じゃなかったけど

でも残念ながら、新種ではありませんでした。学名はCarybdea marsupialis。国内ではあまり見られないけど、海外では、とくに熱帯域ではメジャーなクラゲでした。
傘の部分が最大3cmぐらいで、触手も20cmぐらい。刺胞毒もそれなりに強い種のようです。
最初に名前をつけたのは、あのリンネ。二名法の現在の学名の発案者の。一番最初の名前はMedusa marsupialis Linnaeus,1758。種小名のmarsupialisってラテン語で「袋状の」って意味だから、「袋っぽいクラゲ」というような名前だったのですね。まあたしかに袋っぽいクラゲの一種ではあるけれども、なんというか。ちょっと愛がない。
英名はっていうと、英語版のwikipediaには「sea wasp」があげられているけど、これは複数の立方クラゲの通称として使われることが多いようで種固有の名前としては適切じゃないような。
和名ももちろん無い。ということはですよ。商品化にあたって名前をつけたら、定着しちゃう?


命名「ツインテールボックスジェリー」

『触手2本を髪型に見立てて、「ツインテールボックスジェリー」ってどうでしょうか。和名はツインテールの古い名前をつかって「フタツユイクラゲ」で。』
発案はポリプ提供者にして今回同定にもご尽力いただいた福田雅史氏。ご本人はちょっとふざけてるかな、というご意見でしたが、当店の商品名としてはこれ以上ふさわしい名前はないので、ありがたく頂戴いたしました。
ツインテールって和製英語らしいですが、海外にも日本のサブカルチャーとともにtwin tailsとしてちょっとずつ広まりつつあるみたいですし、日本人がC.marsupialisをそんな風に呼んでる、というのが広まったら面白いじゃありませんか。
残念ながら、ツインテールが似合う時期は短くて、数日後にはのこり2本、触手が発達して4本触手の、スレンダーで透明感のある美女に育っちゃうのです。
おっと、美女、と書いちゃいましたが、うちのポリプまだ雌雄わかってません。まあ、誰にでも欠点は、あるのです。


ポリプはちょっとだけ、寒いのが苦手

ポリプはアンドンクラゲに似て見た目では区別がつかないけど。ほんの少しツインテールボックスジェリーのほうが小さくてカワイイ。匍匐(ほふく)ポリプもでます。
小さい、といってもブラインシュリンプをよく食べて殖えてくれるので飼育はきわめて簡単です。ただし熱帯産の種なので、冬季は保温して飼育してください。
維持にはやはりシャーレではなく、ポリプ水槽のほうがお勧め。匍匐ポリプはアンドンクラゲに比べてさらに小さいので、換水のたびに拾いきれない個体が出てしまいます。
このポリプは高温側でクラゲへの変化が起こります。アンドンクラゲよりはちょっと高めの温度を目安に、5度ぐらいの上昇を刺激として与えてください。


メデューサ化

遊離前のツインテ

またしても、例外の例外。 アンドンクラゲは全員が必ず変態だけど、ツインテールボックスジェリーについては全部がそうとはかぎらない。何の話って、もちろんポリプからクラゲになる時ですよ。おさらいすると、ポリプ期があるクラゲではたいていポリプからメ デューサを分離させる出芽かストロビレーションが普通で、例外的に立方クラゲでポリプが残らない完全変態が見られて我らがツインテールボックスジェリーもその仲間なんだけど、さらに例外的にポリプが残る、つまり変態じゃないパターンも観察出来るんです。そんなに珍しい現象ではないらしいので、気をつけてみていればチャンスはあるはず。
原理的?にはサカサクラゲやタコクラゲの「モノディスカルストロビレーション」と同じなのですが、すごく小さなポリプが痕跡のように残るだけです。立方クラゲの進化の過程を示しているのかもしれません。
遊離直後のメデューサはご覧いただいたとおりのツインテ姿。


メデューサ飼育は推理ゲームだ

立方クラゲのメデューサの飼育は一般に難しくて、この種も同様。いままでのクラゲ飼育では、何かが足りないか、間違っているようです。
餌が特殊でまったく食べない、ということはなくて、ブラインシュリンプを喜んで食べてくれるのに、育たない。
遊離直後のメデューサは、触手の特徴から想像されるとおり、ぺたぺたと水槽壁にくっついています。習性からは飼育の簡単なエダアシクラゲやカギノテクラゲなどを連想しますが同じような止水での飼育では成績がよくありません。
自然界では外敵もいて生存率は低いとはいえ健康に育って子孫も残すのに、なぜか水槽ではうまく育たない。成長したクラゲを採集してきても数日しか生存しない。
我々アマチュアだけでなく、数多くのクラゲを飼育・展示している水族館でもどういうわけか立方クラゲだけがそんな状態なんです。 幸い、飼育に失敗するたびに野生個体を採集する以外に方法がないほかの生物と違って、ポリプさえ維持していれば毎回「セーブポイントに戻る」ことができるのがクラゲ飼育の醍醐味。
説明書は付けません。先入観なしで、可能性を試してください。


飼育のヒントをちょっとだけ

このツインテールボックスジェリー、歴史が古い種だけあって過去にも飼育に挑戦した先人達がいるようで、その中でも150日維持した、という最近の論文がヒントになるかも。
Maintenance, feeding and growth of Carybdea marsupialis (Cnidaria: Cubozoa) in the laboratory (Acevedo, M.J., Fuentes, V.L., Olariaga, A., Canepa, A., Belmar, M.B., Bordehore, C., and Calbet, A. 2013) 全文掲載できないのでヒントになりそうなところをいくつか。
・餌は初期はブラインシュリンプ、のちにイサザアミ、コペポーダ(カイアシ類)などのプランクトン。ワムシは食べない。
・ブラインシュリンプではなんらかの栄養素が不足する(おそらくDHA・EPAなどの不飽和脂肪酸)が不足している可能性が高い。
・水槽は太鼓型ではなく、ポンプで水平方向に渦上の水流ができるようなデザイン。幅1メートル、180リットルの水槽で、壁面を黒くしている。
・壁面への付着が原因で餓死すると考察されている。水流と、光に集まる性質を利用して水槽中央にライトを置くことでメデューサを壁面から遠ざける工夫をしている。
・成長は遅い。100日を越えてやっと傘径が15ミリメートルに達する。
・海水はかけ流し。

180リットル、1メートルの水槽はちょっと、という方(店主もそうですが)には、ビーカーなど小容器の水面にエアポンプからの送気をあて、ブクブク無しで水流を作る方法をお試しください。ツインテールボックスジェリーについていえば、シャーレ等の止水飼育よりも安定します。


宝物のように飼ってほしい

ひみつの宝物のとして飼い続ける、という誘惑もあるんだけど。でも人類の財産でもあると思うのです。ツインテール。
飼いやすいクラゲではなくて、刺胞毒も強い、だからこそいいんだ、という方だけにおすすめいたします。

P-009ツインテールボックスジェリーのポリプ(5個体)¥1,600(送料別)
P-019ツインテールボックスジェリーのポリプ(5個体)+飼育セット¥3,100(送料別)
P-029ツインテールボックスジェリーのポリプ+飼育セット+ポリプ水槽自作キット¥3,400(送料別)
P-129ツインテールボックスジェリーのポリプ+飼育セット+ポリプ水槽完成品セット¥4,300(送料別)

P-019の飼育セットの中身はいつもの通り。到着してすぐ必要なもの。

  • 観察用シャーレ
  • ミニシャーレ
  • ブラインシュリンプの卵(クラゲの餌)
  • ブラインシュリンプ用スプーン
  • ピペット
  • ミニピペット
  • 飼育用海水(500cc、すぐ使えます)
  • 人工海水の素(水換用500cc分x2)
  • 塩素中和剤(水道水のカルキ抜き)

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