ヒドラ、雄性個体のクローン

10年以上ずっと女の子だと思っていたヒドラがいきなり性転換してオス化して体中に生殖器官だらけになってた!

ヒドラ雄性個体
ヒドラ雄性個体

ヒドラが性転換した!

ある日のこと。

いつも販売してるヒドラ(H-003、Hydra sp.)、温度上昇によって有性生殖が誘導されるタイプのメスのクローンで、ときどき造卵器を形成してたんですが、突如、造精器を形成してるオスがいるのを発見!

性転換するヒドラの種があることは知っていたのですが、うちのは10年以上飼っててもメスしか観察したことがなかったのでもうしない系統なのかと半ばあきらめていた矢先でした。

さっそく隔離して増殖させましたよ。その後数回有性生殖が見られましたが全てオスでした。やったぜ。

ヒドラは温度変化で有性生殖が誘導される

ミズクラゲでおなじみですが、ヒドラを含む刺胞動物の多くは水温の変化で季節を感じ取って有性生殖、つまり卵を産んだり精子を放出したりする生殖腺を発達させたり、クラゲの場合は有性生殖器官であるメデューサを出したりします。

ヒドラの場合も普段は雌雄の区別がつかない形状で無性生殖(栄養生殖ともいいます)、つまり初めから自分と同じ姿のヒドラを出芽させる方法で増殖しています。一年に一度、有性生殖に適した季節とか、逆に無性生殖に向いていない季節に一斉にオス化・メス化して耐久性のある卵を残したりしています。

面白いのがクラゲと同じく、種類によってトリガーとなる温度が違っていて、おおざっぱに言うと温度が上がった時がトリガーになるタイプと下がったときのタイプがあるのです。もっというと温度があがっても下がっても、というタイプ、温度はあまり関係なくて水質や海水濃度が変わった時、というのもあるようです。

破滅型の有性生殖もある

子孫を残す方法のひとつなんだから、ハメツ、っていっちゃうのは人間の価値観での見方ではありますが、温度降下によって有性生殖する種は卵・精子を作ったあとそのまま力尽きたように死んでしまいます。

典型的な種類では日本国内で見つかるヒドラではエヒドラHydra robustaやヒメヒドラHydra parva種類では日本国内で見つかるヒドラではエヒドラHydra robustaやヒメヒドラHydra parvaがこれにあたります。

安心していただくために申し上げますが、うちの子たちは破滅型ではありません。生殖腺を発達させた後はケロッとした顔で(あくまでも店主個人の感想です)出芽で増える無性生殖に戻ります。

発達した生殖腺は乳首にしか見えない

ヒドラ、有性生殖期のオスの精巣
ヒドラ、有性生殖期のオスの精巣

店主の心に、なんらかのバイアスがかかっているのでしょうか?オスの生殖腺の形がどうみても、乳首っぽい。というか形状を例えるほかの何かをまったく思いつきません。

ヒドラのすべての種がこのうような形状の造精器を発達させるわけではありません。乳首状の突起の存在はいくつかの種の特徴になっています。

バイアスの原因は・・・いくつかありますが、大きいのはチクビヒドラHydra magnipapillataっていう種の存在です。うちの子がこの種に同定できるかどうかは店主の手には余るのですが形状や有性生殖の特徴からは矛盾する材料はないように思われます。残念ながらこの子は「水槽のヒドラ」なので、ほんとうの産地が(日本国内なのかすら)わかりません。

ちなみにこのmagnipapillata という可愛らしい種小名、magniが「素晴らしい」papillataが「乳首」を意味するラテン語の形容詞です。残念ながら他の種と同一種であるとされてH.vulgaris に統合されて学名としては無効になってしまいました。

受精まで観察できる?

まだ確認できていません(2022年6月時点)。

本来ならば発達した状態の卵がまだメスの体表上にくっついてるタイミングで媒精してやれば受精・卵割が確認できるはずなんですが。

もしかして同じクローンだったり血縁度が近すぎると近親交配が起こらないような植物でいうところの自家不和合のようなしくみがあるのかもしれません。

なかなか同じタイミングで有性化する個体が少ないのも問題で、もちろん、狙って有性生殖を試みるのであれば最初から雌雄を混ぜて飼育すればいいのですが、それだと誰がオスで誰がメスだかすぐわからなくなっちゃいます。

お店では販売する分をクローンで安定して(しかも混ざらないように!)増やすのが一番の目標なので、有性生殖はつい後回しになります。お買い上げいただきましたら是非、「卵から産まれるヒドラ」にも挑戦していただけたらと存じます。

ヒドラの戦略と不死性

よく考えたら、有性生殖やっておきながら何事もなく通常の栄養生殖の不死の身体に戻るって、一部のクラゲの若返り(有性生殖し終わって死にそうになったギリギリのところで若いポリプとして「リセット」される)よりもすごいことなのかも。同じ属の別の種では栄養生殖に戻れないということも、生き物の寿命という謎を解くためのカギになっているような気がします。

オスのクローン売ります(メスも)

ついでに、メスのクローンも。卵を作った個体の単一クローンを用意しました。飼育方法は特に普通のヒドラと変わりません。低めの水温(15℃)から20℃に上昇するようなタイミングでよく有性生殖化します。

繰り返しもうしあげますが、有性生殖が始まるまではオスメスの区別はまったくつきません。混ぜたらもう絶対分けられないから、ご購入後も気を付けて管理してください。

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