ジュズクラゲ

ジュズクラゲ Stauridiosarsia ophiogasterを紹介します。

図鑑で見てるだけだと、例によってクラゲならではの、「ちょっと自由すぎる」デザインのせいでキワモノみたいに扱われるかもしれないけど、飼いやすくて、興味深くて、そして美しい。

ジュズクラゲStauridiosarsia ophiogasterのメデューサ。水中で静止してるところはサンキャッチャーみたい。
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ジュズクラゲStauridiosarsia ophiogasterのポリプ

あのポリプに似てるけど・・・

ポリプはちょっと、エダアシクラゲCladonema pacificum に似ています。

でもよく見るとちょっと違う。ポリプの下のほうに、トゲのような触手が出ています。エダアシクラゲと同じ属のCladonema radiatumも同じような触手があるのでこの近縁種のように見えますが、正解はジュズクラゲStauridiosarsia ophiogaster、でした。昔の名前Dipurena ophiogasterでも知られている、日本周辺の海でよく見られる種です。

ジュズクラゲ、花クラゲ目、タマウミヒドラ科

遊離直後のジュズクラゲのメデューサ
遊離直後、ジュズクラゲのメデューサ

メデューサの触手は4本、放射管も4本、各触手の付け根には眼点があって体はほぼ透明なので、水中には4つの点が浮いているように見えます。小さいうちは口柄も胃も小さいですが、ちゃんと孵化直後のブラインシュリンプを捕食できます。

ジュズクラゲのメデューサ
ジュズクラゲのメデューサ、遊離後3日目ぐらい。
ジュズクラゲ
ジュズクラゲのメデューサ、落射光で。胃の中にあるのは間違って食べたブラインシュリンプの未孵化卵。触手の付け根に眼点がはっきり見えてます。

和名のジュズクラゲの名前の由来、数珠(じゅず)は口柄が傘の外まで伸びて、等間隔に複数の生殖腺が発達する姿に由来します。種小名のophiogasterもラテン語で蛇みたいな胃袋、というそのままの名前。

育ち始めて3日目ぐらいで胃袋の基部にそれらしき瘤ができ始めて胃袋も大きく目立つようになってきます。上のほうにあるのが生殖腺で、成長とともに数が増えていきます。途中で枝分かれしてそれぞれに胃袋と口ができたりするんですが、この辺も自由。

水温が上がるとメデューサが次々に出るポリプで、とにかく小さいメデューサをお見逃しなく。

ポリプは変な増え方

ポリプを飼ってみると増え方がちょっと変わっているのに気づきます。

ストロン(走根・ヒドロ根)が伸びてヒドロ花を増やすのは同じですが、もう一つ、ストロンの端が自切するようにして増えるのがよく見られます。これは別の科のエダクラゲのポリプでもよく見られます。出芽の仕方はちがいますが、マミズクラゲのフラスチュールとも似ていますね。

ただこれ、タコクラゲやサカサクラゲのプラヌロイドのように繊毛で泳ぎまわったりするかというとそんなことはなく、ほとんど動かないか、ものすごくゆっくり匍匐するもののようです。

お勧めのポリプの飼い方

シャーレでも飼育できますが、たぶんポリプ水槽のような、水流があって換水しなくて済むような仕組みのほうが向いているような気がします。

最初の一匹をシャーレにいれて毎日給餌換水しているとちゃんと新しいヒドロ花が出てストロン(走根)も伸びるんですが、ストロンが痩せて透明になったり古いヒドロ花が弱っていったりで、どうも効率よく増えないようなのです。

お届けするのは糸くず状のコロニーなので、飼育セットの小さいシャーレとか、輸送用のポリプ容器を半分に切ったのとか、なんでもいいのですがいったん付着させてポリプ水槽に沈めます。シャーレはスチロール製で海水にも沈みますが、安定しないのでサンゴ粒を上に載せて大雑把でいいので安定させます。

円筒形のガラス瓶のポリプ水槽ではあまり心配いりませんが、平面がある水槽を使うときはシャーレの内側がぴったりくっついてポリプを密閉させちゃう事故にもご注意ください。

走根の遊離があるので、シャーレで飼うときも交換した海水はすべて捨てずに貯める別容器が絶対に必要です。

メデューサの飼い方

飼育にはとくに工夫はいりませんが、シャーレのような浅い容器では大きくなりません。コップぐらいの、100ミリリットルぐらいの海水が入る容器での飼育がおすすめ。水流は特になくても大丈夫みたいです。

ただ胃袋ひきずって泳ぐので清潔な容器と海水が安心です。底砂は入れないほうがいいでしょう。ツインテールボックスジェリーと同じように、触手で壁面にくっつ行動も見せます。

例によってふ化直後のブラインシュリンプを一日一回たっぷり与えて、1〜2時間後ぐらいに食べ残しのブラインシュリンプといっしょに海水をごっそり取り換える(というか新しい水槽にメデューサだけ移す)のが簡単で確実かと思います。

餌のブラインシュリンプとメデューサともに光に向かって泳ぐ性質があるので照明を工夫して個体数に対して多めの水量でちょうど食べきるだけの餌を与えて換水しないで飼う、というのも楽しめるかも。でも吸い込まれちゃうのでろ過装置は併用できません。

密閉できるペットボトルやジャムの空き瓶みたいな容器で、机の上や別途サイドに置いて時々眺めるのにぴったりなクラゲです。

ところでもう一つの触手の謎

ジュズクラゲのポリプ
ジュズクラゲのポリプ、2種類の触手の違いに注目

このポリプの特徴ともいえる、糸状の触手なんだけど、類縁関係が近いとは思えないCladonema radiatumも持っていることを考えると、ただの飾りじゃなくて、なんらかの利点があって独立に進化したことは確かです。

この謎を解くためだけでもこのクラゲを飼う価値があるんじゃないでしょうか?店主の極めて個人的な予想は捕食時のセンサーじゃないかというものですが、どうでしょうか。

クラゲの形の方も謎

これも謎過ぎます。なぜこうも胃袋を外に出すようなデザインでなければいけないのか。

確かに他のグループのクラゲでも、例えばカラカサクラゲのように口柄(こうへい)がしたに伸びて胃袋だけ傘の外に出るデザインがありますね。水中に浮遊するのに傘の外に重心があるというのはひとつの解決法のようにも見えます。

ジュズクラゲのような花クラゲ目は口柄の周囲に生殖腺ができるので伸縮性との兼ね合いで、あのような数珠状になっているのでしょうか。

もひとつ、無責任な仮説を提唱しておきましょう。実際に飼ってみれば経験できると思うんですが、一般的なヒドロクラゲとは逆向きに泳いでいるように錯覚します。触手の根元側に刺胞がほとんどなくて透明なのも原因かもしれません。進行方向が捕食者にわかりにくくする、というのはよくある適応のひとつで偽の目玉を持つ魚や尻尾のように見える頭部を持つ昆虫とか、いろいろ前例はありますね。

ポリプでの販売

このポリプ、店主が愛知県の海岸で採集した株なのでいまのところ世間に出回っていませんから、「もし買いそびれたら永遠に同じクローンは手に入らないかもしれない」ポリプなんです。どうか是非、急いでお買い求めください。

お勧めはポリプ水槽付きのP-124です。

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飼育セットは以下のとおり。

  • 観察用シャーレ φ90mm
  • ミニシャーレ φ30mm
  • ブラインシュリンプの卵(ポリプの餌)
  • ブラインシュリンプ用スプーン
  • ピペット
  • ミニピペット
  • 飼育用海水(500cc、すぐ使えます)
  • 人工海水の素(水換用500cc分x2)
  • 塩素中和剤(水道水のカルキ抜き)

おまけと、おまけのおまけ。夏じゅう出てくるメデューサもおすそ分け販売します。

M-008ジュズクラゲのメデューサ(生体のみ )3〜5個体¥1,000(送料別)
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